スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
「ああ。別に気にしなくていいよ。乱暴な態度が目に余っただけだから。頭を上げてくれる?」
『シューさん』は結乃の畏まった態度にひたすら戸惑っていた。
(やっぱり『シューさん』だったんだ……)
昨日のやり取りは夢や幻でもなく、間違いなく彼だったことに安堵する。
スーツを着ていなくても髪型が変わっていようと、昨日の男性は『シューさん』だったのだ。
結乃はスッと頭を持ち上げると、ピンチから救ってくれた英雄に改めてこう言った。
「お礼をさせてください!甘いものお好きですよね!?ケーキもシュークリームに負けないくらい美味しいのでぜひ召し上がってください!お好みのものをすぐにお持ちします!」
勢いに任せ、ひと息で話しきった後で、自分の失態にはたと気がつく。
(押し付けがましかった……かも?)
シュークリームが好きなら甘いもの全般が好きだろうというのは結乃の予想でしかない。
強引にケーキをすすめたことを粛々と反省していると、彼は顎に手をやり何かを考え込んだ。
「うーん。確かにケーキも気になるけど……」
どうやら、甘い物好きという予想は外れていなかったようだ。結乃がほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。
「じゃあ、ひとつ頼まれてくれるかな?」
「へ?」
思いも寄らぬお願いに、今度は結乃の方が素っ頓狂な声を上げることになった。