スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い

 ◇

 お礼がしたいと話した翌日。
 定休日にも関わらず、結乃は朝五時に目を覚ました。
 ムクリと布団から起き上がると、シャワーを済ませ、髪をブローする。
 そして、クローゼットからありったけの服を引っ張り出した。

(なにを着よう……)

 結乃のワードローブはオシャレという単語とは無縁の、貧弱なラインナップばかりだった。
 結乃はしばし悩んだ結果、今年買ったばかりのカシュクールデザインのシフォンワンピースを着ることにした。
 ウエストのゴムのおかげでスタイルが良く見えるし、ふわりと揺れる裾が可愛く、一緒に服を買いに行った友人からも褒められた。
 耳には働いている時にはつけられない雫型のイアリング。
 髪も少しだけアイロンで巻き、ハーフアップにしてリボンバレッタで留めた。

(お、おかしくないかな……?)

 姿見の前で一生懸命、考えみたものの、そもそもの正解が分からない。
 もう一度、前髪を整え直そうかと思ったその時、セットしていたスマホのアラームが鳴る。
 待ち合わせの時間は容赦なく迫っていた。

(急がなきゃ……!)
 
 結乃はバッグを持つと、慌てて部屋から飛び出した。
 廊下を小走りで駆け抜けていると、朝十時を過ぎてようやく起床してきた貢とすれ違う。

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