スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
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お礼がしたいと話した翌日。
定休日にも関わらず、結乃は朝五時に目を覚ました。
ムクリと布団から起き上がると、シャワーを済ませ、髪をブローする。
そして、クローゼットからありったけの服を引っ張り出した。
(なにを着よう……)
結乃のワードローブはオシャレという単語とは無縁の、貧弱なラインナップばかりだった。
結乃はしばし悩んだ結果、今年買ったばかりのカシュクールデザインのシフォンワンピースを着ることにした。
ウエストのゴムのおかげでスタイルが良く見えるし、ふわりと揺れる裾が可愛く、一緒に服を買いに行った友人からも褒められた。
耳には働いている時にはつけられない雫型のイアリング。
髪も少しだけアイロンで巻き、ハーフアップにしてリボンバレッタで留めた。
(お、おかしくないかな……?)
姿見の前で一生懸命、考えみたものの、そもそもの正解が分からない。
もう一度、前髪を整え直そうかと思ったその時、セットしていたスマホのアラームが鳴る。
待ち合わせの時間は容赦なく迫っていた。
(急がなきゃ……!)
結乃はバッグを持つと、慌てて部屋から飛び出した。
廊下を小走りで駆け抜けていると、朝十時を過ぎてようやく起床してきた貢とすれ違う。