スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
「休みの日に呼び出してごめんね。結乃ちゃんにはこれを食べてもらいたかったんだ」
柊登はそう言うと、持参した紙箱を結乃にも見えるようにベンチに置いた。
紙箱を開け中を覗き込むと、丸みを帯びた手のひらサイズの白い物体がいくつも収まっていた。
「大福ですか?」
「そう。フルーツ大福。和菓子は苦手?」
「いえ!大好きです!」
「それはよかった」
柊登は食べやすいようにと紙皿とお手拭きまで準備していた。
「でも、どうして私に大福を?」
「俺、パティスリーやスイーツ専門店の経営コンサルタントをしているんだ」
「経営コンサルタント……」
「そう。職人達はスイーツ作りに自信があっても、店舗経営については素人だろう?ブランディングや資金繰りについてアドバイスしたり、腕のいい職人には出資して共同経営を持ちかけたり……」
「うわあ!そうだったんですね!」
点と点がようやく繋がり、結乃は納得した。
あの奇怪な食べ方は経営者ならではの、厳しい視点に基づいたものだったのだ。
柊登は二年前に起業して以来、スイーツ店専門の経営コンサルタントとして、多くの製菓店の店舗運営に携わってきたという。
いくつかの店舗では共同経営者として名を連ね、三十歳にして、既に五店舗もスイーツ店を経営しているそうだ。