スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
「あの、強いて言うなら……」
「強いて言うなら?」
「大福って求肥の色が全部白いじゃないですか?お年寄りとか子どもだと、シールを見落すこともあるし、中のフルーツが何か、もっとわかりやすくしてもらえるといいなあ……なんて……」
大福を包むフィルムにはフルーツの名前が書かれたシールが貼ってある。
採算と作り手の効率を考えれば、この方法が一番楽なことは結乃だってわかっている。
しかし、購入した人の中には小さなシールを見落とす人もいるだろう。
「お役に立てたでしょうか?作る方は本当に素人で……」
「いや、とても参考になったよ。ありがとう」
柊登は何か思うところがあったのか、思案に暮れる様子を見せた。
(変なの……)
よく知らない男性とふたりきりという状況なのに、不思議と居心地は悪くない。
いつもなら亡くなった父と貢以外の男性が近寄って来ると、緊張で身体がこわばってしまうのに、今日は自然体でいられる。
助けてもらった恩があるせいだろうか。
この人は信用できると、心が勝手に判断しているとでも?
こっそり横顔を盗み見ていると、腕を組みかえようとした柊登とバチリと目が合った。
「結乃ちゃん」
柊登はずいっと前のめりになり、結乃の頬に手をかけた。
シュークリームを見つめる時と同じ眼差しで結乃をジイっと見つめ、徐々に美麗な面差しを近づけてくる。