スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
(え?え!?)
なにが起こっているのかわからず、結乃はただただ目を大きく見開くばかりだ。
まつ毛の数さえ数えられそうな至近距離で見つめ合うことが、なにを意味するのか。
初恋がまだの結乃ですら知っている。
(まさか……!?)
突然訪れた口づけの予感に、結乃はぎゅっと目を瞑り首をすくませた。
しかし、何秒経っても期待していたような出来事は起こらなかった。
「……ここ、粉がついてるよ」
柊登はクスリと笑い、親指で結乃の唇のふちをなぞった。
「うん、取れた」
柊登はウェットティッシュで指を拭うと、乗り出していた身体をすっと元の位置に戻した。
羞恥のあまりカァーっと身体が熱くなる。
(なにを期待していたの!?)
キスされるかもしれないと、あらぬロマンスを期待していた自分が恥ずかしい。
穴があったら入りたい。むしろ、掘りたい。掘らせてほしい。