スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
◇
「シュークリームとブレンドコーヒーひとつ。店内で」
「はい……」
いつも通りノエルにやって来た柊登とは対照的に、結乃の声には力がなかった。
結乃は柊登がシュークリームを食べ終わるのを待ち、席まで謝罪に赴いた。
「昨日はすいませんでした!私、実は柊登さんが『スイーツ王子』と呼ばれるような凄い人だって知らなくて。色々と失礼を!」
昨晩、柊登が経営しているお店を調べた結乃はひえっと、恐れおののいた。
柊登のお店はどれも、有名なパティシエが監修を手掛ける超人気スイーツ店だったのだ。
無知というのは恐ろしい。
ひたすら恐縮しっぱなしの結乃に対し、柊登はさして気にした様子もなく、淡々とコーヒーを飲みながら答えた。
「ついに知られちゃったか……。本当に大層なあだ名だよね。王子って柄でもないのに」
「そんなことないです!助けてもらったとき、本物の王子様みたいでかっこよかったです!」
本音がつい漏れ出て力説すると、柊登は弾けるような笑い声を上げた。
「あはは!ありがとう!全部バレちゃったみたいだし、もう変装する必要もないかな?」
あのスウェット姿は変装のつもりだったのか。
確かにテレビそのままの姿で来店されたら、目立ちすぎる。
最初からスイーツ王子のオーラを全面展開されていたら、結乃も柊登を警戒していただろう。