スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い

「これ、よかったら皆さんで」

 柊登が掲げた紙袋には、例のフルーツ大福のお店のロゴが印刷されている。

「わあ!いいんですか?」
「結乃ちゃんのおかげで売れ行きも好調なんだ。この大福は店主から結乃ちゃんへのお礼だよ」
「で、でも!私は具体的にこう変えろって言ったわけじゃあ……」
「いや、結乃ちゃんのお手柄だよ」

 例のフルーツ大福は結乃のアドバイスを受け、求肥とフィルムに改良が加えられた。
 求肥はメロンの品種に応じて、緑色とオレンジに変えられ、フィルムには網目状の柄がつけられた。
 これらが合わさると、本物そっくりのミニメロンが出来上がる。
 コロンとした可愛らしいフォルムは瞬く間に話題となった。SNSでは連日この大福の写真が投稿され、新たなトレンドとして様々な媒体で取りあげられている。
 ミニメロン大福は今や入手困難な代物だ。
 
「ありがとうございます。それではありがたくいただきます」

 せっかくの心遣いを無駄にするのも憚られて、結乃は今度こそ紙袋を受け取った。

「こっちは俺から結乃ちゃんにプレゼント」
「え?」

 続けざまにブランド物の包装紙とリボンで包まれた平箱を渡され、結乃は驚愕した。
 開けるように目で合図されすすめられ、恐るおそる包装紙を外していく。

「素敵なスカーフ!」

 箱の中にはボタニカル柄のシルクスカーフが一枚入っていた。
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