スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
「こんな高そうなスカーフ、本当にいいんですか?」
遠慮がちに尋ねれば、柊登はふっと表情を緩め平箱に収められていたスカーフを手に取った。
「ほら、こうやってくるくる折って、首にかけて結べばいい感じだよ」
柊登の手によってあっという間に首にスカーフが巻かれていく。
柊登が選んだだけあって、スカーフの手触りは滑らかで色も上品だ。大人の階段を二、三段駆け上がった気分。
「うん、想像通り。似合ってるよ」
似合っていると太鼓判を押されると、途端に気恥ずかしくなってくる。
「ちょっと、ちょっとお客様!うちの看板娘を買収されちゃあ困りますよお!」
それまでふたりの様子を見守っていた母は、ここぞとばかりに茶々を入れた。
「もう!やめてよ、お母さん!あっち行ってて!」
シッシッと手で追い払うと、母は渋々テーブルをカウンターに戻っていった。
しかし、野次馬根性が隠しきれず、しきりに聞き耳を立てている。
ギックリ腰から復活し柊登の正体を知ると、いち早くサインをねだったのは母だった。
ミーハー心丸出しで、柊登には本当に申し訳ないことをした。