スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
◇
「なかなかやるじゃない、あのスイーツ王子。結乃なんかすっかり骨抜きにされちゃって……」
母はミニメロン大福片手に柊登をそう評した。
ノエルの閉店後、石蕗家一同は締め作業を終え帰宅したその食卓で、柊登からもらった大福をご相伴にあずかった。
「テレビなんか出てチャラチャラしすぎだろ。結乃もあんな男のどこがいーんだか……」
母と同じように大福片手にして、くどくどと不満を訴えているのは貢だ。
柊登からプレゼントされたスカーフを見てから、どことなく機嫌が悪い。
「あら?恋心に理由はいらないのよ。私にもそういう時期があったわー」
「はっ!相手はあの『スイーツ王子』だぞ。結乃なんか相手にするかよ?弄ばれてるのがオチだって」
「ちょっと!柊登さんの悪口を言うのはやめてよ。さっきから黙って聞いていれば、言いたい放題じゃない!」
結乃はムキになり湯呑みがのったお盆をやや乱暴な動きでテーブルに置き、椅子に腰掛けた。
そもそも結乃が柊登を好きだという前提で話が進められているのがおかしい。
「俺が思うに、あいつは相当な変人だぞ。教えてもねえのに、シューに使ってる小麦の産地から牛乳の仕入れ先までほとんど当てやがった。そういうやつは大概ヤバイ性癖を隠し持ってんだ」
「……どんな偏見よ?」
スイーツに携わる者同士通じるものがあるかもと思い、貢を紹介したのが間違いだった。
柊登の熱意は貢とは方向性が違ったようで。