スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
「見た目で全部判断できるならいつも苦労しねーんだよ」
「柊登さんはノエルのファンなだけ!やましい気持ちはこれっぽっちもないの!私だって……」
「え?ないの?ほんとにー?」
母は結乃をからかい、意味ありげにバチンとウインクを飛ばした。
犬のように尻尾を振りながら柊登に駆け寄って行くところを見られているだけに否定しにくい。
「とにかく!柊登さんに変なこと言わないでよね!?」
結乃は椅子から立ち上がると、使い終わった皿をシンクに置き、ロンTの袖を捲った。
(もう!お兄ちゃんもお母さんも!好き勝手なことばかり言うんだから!)
結乃だって柊登の言うことをすべて間に受けたりしない。
(柊登さんはシュークリームが好きで通ってくれているだけで、私のことなんて別に……)
マイナス思考の深みにハマり、皿洗いの手が止まる。
――柊登は結乃など眼中にない。
その証拠に店では会話をするものの、噴水広場での待ち合わせ以来、個人的なメッセージのやり取りはない。
スカーフをもらい浮上した心が、また深く沈んでいく。
(私、一体どうしちゃったんだろう……)
ちょっとしたことで、浮かれたり、沈んだり、胸に痛みが走ったり。
当たり前だった日常が少しずつ変わっていく。
結乃にとってはすべて初めてのことで、戸惑うばかりだった。