スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
◇
「結乃ちゃん、ちょっといい?」
「あ、はい。なんでしょう?」
柊登から声をかけられた結乃はケーキ出しを一時中断し、彼が座るテーブル席へ駆けつけた。
「この中ならどれが一番好き?」
柊登がテーブルの上に置いたのは、三種類のギフトボックス。
色も形も様々でどれも可愛いけれど、結乃が特に目をひかれたのはクロスステッチの正方形のボックスだ。
「これ、ですかね?」
クロスステッチのボックスを指差すと柊登はうんうんと頷いた。
「実は俺もこの柄がいいんじゃないかと思っていたんだ」
柊登はそう言うとボックスを紙バッグの中にしまっていった。
「それ、なんなんですか?」
「この秋発売予定の限定マカロンギフトボックスのサンプル。うちのパティシエ達の中でも、どれにするか意見が割れちゃって。最後の一票ありがとう」
お礼を言われると、えっ?と変な声が出てくる。
「私の意見で決めちゃっていいんですか!?」
「俺にとって結乃ちゃんは女神様だからね」
柊登の口からは息を吸うように結乃を蕩けさせる殺し文句が紡がれていく。