スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い

「ノエルの口コミはほとんど高評価なんだけど、数件だけ極端な低評価がつけられている」

 柊登はそう言うとスマホを取り出し、結乃に(くだん)の口コミを見せた。

【若い店員が客に媚を売っている。ケーキもまずい。買う価値なし】
【古くて狭い上にカビ臭い。早く閉店するべき】

「なにこれっ……」

 好意的な意見が並ぶ中、これらの口コミだけが悪意に満ち満ちている。
 口コミが投稿されたのは二週間前。つい最近だ。
 柊登はスマホをしまうと、動揺のあまり言葉を失う結乃の右手をとり、そっと握りしめた。

「口コミと立ち退きの件は無関係なのかもしれない。でもね、結乃ちゃん。何か困ったことがあったらすぐに相談して」
「はい……」

 手のひらから伝わる温もりのおかげで、結乃は次第に落ち着きを取り戻していった。

(怖くない……)

 男性に触られる恐怖心よりも、柊登がいてくれてよかったという安心感のほうがはるかに勝っていた。
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