スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
業務用の塗装スプレーで施された落書きは、少し擦った程度では到底落ちない。
臨時休業の張り紙を入口に貼ると、三人は家まで帰宅した。
「あー疲れた」
「ホント、くたくたね」
帰宅するとドッと疲れが押し寄せ、誰も椅子から動こうとしなかった。
外壁を塗り直すのにどれだけのお金と労力がかかるのか。考えるだけで頭が痛くなる。
はあっと大きくため息をついたそのとき、結乃のスマホが鳴った。
画面に映し出された名前に度肝を抜かれる。
【御厨柊登】
大福の件以来二度目となる柊登からの連絡に、慌てふためきながら電話をとれば、さらに耳を疑うようなお願いをされる。
「今からですか!?」
「どうした?」
結乃は耳に当てていたスマホを下ろし、先ほどからチラチラと横目で視線を送ってよこす貢にこう言った。
「柊登さんが臨時休業の張り紙を見たそうなの。それで、今からお母さん達と話がしたいって……」