スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い

「もっと頼りにしてよ。心配でたまらない……」

(心配なのはお店?それとも……)

 結乃が結論を出さないうちに、柊登はゆっくりと身体を離した。

「約束ね?」

 柊登は右手の小指を立て、結乃の目の前に差し出した。
 指きりげんまん。
 子供みたいな拙い約束をすると、柊登は一度も振り返らずに帰って行った。

(顔が熱い……)

 初夏の陽気のせいだけではない。
 柊登と指きりげんまんした小指を何度もさする。
 もしも柊登と赤い糸が繋がっているとしたら、こんなに嬉しいことはないのに。

(柊登さんが好き)

 自覚した途端、身体が燃えるように熱くなる。
 それでも夜風が何度も身体をすり抜けていくと、流石に肌寒さを覚えた結乃は家の中へと戻った。

「ただいま」
「結乃!?」
「どうしたの?」
「い、いい、いいい、いや!なんでもない!」

 ふたりはやけにあたふたしながらテレビの前に立ち、結乃から見えないように巧妙に画面を隠した。

(あやしい……)

 母と貢が結託しているなんて、絶対に碌なことにならないのは結乃の経験則からも明らかだった。
 結乃はリモコンを手に取り、テレビの音量を上げた。
 あっと声をあげ、母が止めようとしたときにはもう遅かった。
 
『イベント初日は、かねてよりスターテレビの女性アナウンサーとの交際が報じられているスイーツ王子に注目が集まりました』
「交際……?」
 
 耳を疑う報道に、結乃は目の前が真っ暗になった。
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