スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
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(柊登さん、彼女がいたんだ……)
柊登の熱愛報道を知ってから早一週間。
結乃はうつろな表情でショーケースを拭いていた。ショーケースの中には貢が作るスイーツが、並べられているというのに、ここ最近は美味しそうに見えない。
(そりゃあ彼女くらいいるよね……。あれだけ素敵な人だもん)
結乃は肩を落とし、深いため息をついた。
柊登と熱愛が報道されたのは、八頭身のスレンダーな美女。
アナウンス能力に長けた才媛で、ミスコンの出場経験もある。柊登とは大学の同級生だという。
美男美女でお似合いとしかいいようがない。
(舞い上がっていたのかも……)
結乃に構ってくれていたのはノエルに来るついでで。結乃にとっては一大事でも、柊登には当たり前のことで。
街角の片隅にある洋菓子店の販売員なんて、最初から相手にされていない。
それなのに、柊登の一挙手一投足に浮かれて、のぼせて、舞い上がって。身の程知らずもいいところだ。
「ちょっと結乃!家ではいくらでも落ち込んでいていいけど、店ではシャンとしなさい!」
「いったーい!」
母に背中を叩かれ、目の奥に星が舞う。
手加減なしの張り手は、自己憐憫に浸っていた結乃をあっという間に現実へ呼び戻した。