スイーツ王子の溺愛はケーキよりもなお甘い
「なんだよ、結乃。その男に気があるのか?」
「ち、違うよ!」
気があるなんてとんでもない。
結乃は両手を横に振り、慌てて貢の言葉を否定した。ところが、貢は簡単には信じてくれない。
「いいか?お前みたいな世間知らずのアマチャンは変な男にコロッと騙されるって相場が決まってんだ!付き合う前にちゃーんと俺に言うんだぞ?」
力説する貢に結乃も苦笑いだ。
「ねえ、お兄ちゃん。私、もう二十四歳になるんだよ?いくらなんでも過保護過ぎだよ」
貢は結乃の言い分を聞き流し、構わず続けた。
「おのなあ、もう少し自分が変態に好かれやすいって自覚しろよ!今まで誰が守ってやったと思ってるんだ?」
「はいはい!感謝してますよ!だからさっさと作業場に戻ってください!」
結乃は貢のコックコートをぐいぐいと押し、作業場まで追い立てた。
(私だって好きでこんな見た目に生まれたわけじゃないもん)
結乃はこの体型のせいで、男性から目をつけられ、心ない言動で傷ついてきた。
学生時代はクラスメイトの男子から『ウシ女』なんて酷い呼ばれ方もされていた。
結乃が無視すると男子のからかいはエスカレートしていった。
話を聞いた貢が学校まで乗り込み周囲に睨みを利かせてくれなかったら、とてもまともな学生生活を送れなかっただろう。