このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 それだけ魔物による被害が相次いでいるらしい。
「だから、形だけもう一度、聖女召喚の儀を行うということで、今、神官長と話をつめている」
「形だけ?」
 ああ、とクライブは頷く。
「聖女召喚の儀を行っても、聖女はマリアンヌであるからマリアンヌが召喚される」
「それってどういうことでしょう?」
「例えば、マリアンヌが屋敷にいたとしよう。王城で召喚の儀を行ったとしたら、マリアンヌが屋敷から王城へと移動するだけだ。なによりもマリアンヌは聖女だからな」
「はぁ……」
 それでは、マリアンヌが聖女であると公表するだけではないのだろうか。
「そもそも聖女召喚の儀は、神聖なる儀式であることから、不特定多数の立ち会いを認めていない。それもあって、前回はこっそりと行った」
 マリアンヌの正体がばれていないのもそのせいらしいし、昨日もそのようなことを言っていた。
「だが今回は、聖女を求めるやつらを別室に控えさせておく」
「ええ?」
「そして召喚の儀式で現れたイリヤを、聖女として紹介する」
 今までの話を聞いたかぎりでは、聖女召喚の儀を行っても召喚されるのはマリアンヌである。それなのに、なぜイリヤが登場するのか。
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