このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 マリアンヌが暴れたときには、魔法使いたちを呼びつけなんとかするように依頼する。そんな彼らもマリアンヌの魔力には敵わないようで、三人がかりで対抗する。
 世話のほうは、専属をつけずに交代で。これで侍女やメイドたちもいやいやながらも引き受けてくれた。給金をあげたのも理由の一つになるだろう。
 そうやってその場しのぎで誤魔化してきてみたが、魔法使いや彼女たちはマリアンヌが聖女であるとは知らない。クライブが見つけた魔力の強い赤ん坊。だからこそ、次第に不満がたまっていくのだ。
 そこで藁にもすがる思いで、職業紹介所に求人を出した。これも普通の出し方とは異なる。
 掲示板には魔力のある者しか読めないようにと求人を貼り付ける。そして紹介所の控えには、普通の求人を挟み込んでおく。とりあえず「求人を出した」という事実があれば、マリアンヌの世話をしている者たちの不満も少しだけは解消されるのだ。
「いつまで続ければいいんですか?」と聞かれたときに、「求人を出した」と答えるだけでよい。それだけで、なんとなく彼らは安心するようだった。
 それが、求人を出したその日のうちに人がやってくるとは思ってもいなかった。
 秘密の求人であったため、知っている者も聖女マリアンヌに関わりのある者たちだけ。危うく門番に追い返されそうになっていたが。こんなにすぐに来るだろうとは思っていなかったから、来たときの対応方法など、まったく考えていなかった。
 聖女やら魔物の対応策に行き詰まって、外をうろうろと散歩していたから、彼らが騒いでいるのはすぐにわかった。そして、イリヤと出会った。
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