このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 エーヴァルトが立ち合うと言えば、権力に屈したあいつらも渋々と納得する。国王本人がそれの言い出しっぺであることなど、彼らは知らないのだ。
 聖女召喚の儀式を行うのは、神官長と魔法使いの三人。神官長も魔法使いも、前回の召喚の儀に関わった者たちである。この茶番劇に一役買ってもらう。
 エーヴァルトが立会人を務め、クライブはそれの補佐をする。
「では、頼む……」
 狭い部屋に描かれた魔方陣。召喚の儀が成功すれば、この中心部にマリアンヌを抱いたイリヤが現れるはず。そしてイリヤを聖女(代理)と認めるのだ。
 チクチクと胸が痛むのだが、クライブにはその原因に心当たりなどなかった。ぐっと拳を握りしめる。

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