このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
ばん、とイリヤは求人票を騎士に向けて見せつけた。
「これのどこが白紙なんです?『求む! 家庭教師。子どもの相手が得意な方。性別年齢国籍問わず。住み込み可。詳細は面接にて』って、大きくばっちり書いてあるじゃないですか。もしかして、目が節穴なのではなく、字が読めないとか?」
柄の悪い騎士の後ろでは、幾人かがこそこそと内緒話をしている。そして、結論が出たのか、柄の悪い騎士の耳元でこっそりと何かをささやいていた。
「……お前。噂のイリヤ・マーベルか?」
イリヤは目を細くして、相手を睨む。
「それが何か?」
「そこまでして、王城に入り込んで、男をたらしこみたいのか?」
「あなた方がどのような噂を耳にしているかわかりませんが、その噂は事実でしょうか? 噂に踊らされる人間は、噂によって身を滅ぼしますよ?」
この騎士たちがイリヤ・マーベルの名を知ってこのような態度を取っているのであれば、本当にいつものあの噂が広がっているのだろう。だったら悪い女らしく振る舞えばいい。
「イリヤ・マーベルだったら、なおさらこの門はくぐらせられねぇな。男を手玉にとる毒婦だろ? 俺様は温情に溢れる人間だからな、本来であればこれをこうやって破り捨ててやりたいところだが」
柄の悪い騎士はそう言って、イリヤに紹介状と求人票を突きつけた。
「これを持って、さっさと帰れ。そして二度と、ここに来るんじゃねぇ」
イリヤとしては、どうしてもこの仕事につきたい。そうしなければ、マーベル子爵かサブル侯爵の餌食になってしまう。それだけは勘弁願いたい。どちらも「どちらにしようかな、神様の言うとおり」にもしたくない相手である。
「求人が偽物だって、どうして決めつけるんですか!」
「これのどこが白紙なんです?『求む! 家庭教師。子どもの相手が得意な方。性別年齢国籍問わず。住み込み可。詳細は面接にて』って、大きくばっちり書いてあるじゃないですか。もしかして、目が節穴なのではなく、字が読めないとか?」
柄の悪い騎士の後ろでは、幾人かがこそこそと内緒話をしている。そして、結論が出たのか、柄の悪い騎士の耳元でこっそりと何かをささやいていた。
「……お前。噂のイリヤ・マーベルか?」
イリヤは目を細くして、相手を睨む。
「それが何か?」
「そこまでして、王城に入り込んで、男をたらしこみたいのか?」
「あなた方がどのような噂を耳にしているかわかりませんが、その噂は事実でしょうか? 噂に踊らされる人間は、噂によって身を滅ぼしますよ?」
この騎士たちがイリヤ・マーベルの名を知ってこのような態度を取っているのであれば、本当にいつものあの噂が広がっているのだろう。だったら悪い女らしく振る舞えばいい。
「イリヤ・マーベルだったら、なおさらこの門はくぐらせられねぇな。男を手玉にとる毒婦だろ? 俺様は温情に溢れる人間だからな、本来であればこれをこうやって破り捨ててやりたいところだが」
柄の悪い騎士はそう言って、イリヤに紹介状と求人票を突きつけた。
「これを持って、さっさと帰れ。そして二度と、ここに来るんじゃねぇ」
イリヤとしては、どうしてもこの仕事につきたい。そうしなければ、マーベル子爵かサブル侯爵の餌食になってしまう。それだけは勘弁願いたい。どちらも「どちらにしようかな、神様の言うとおり」にもしたくない相手である。
「求人が偽物だって、どうして決めつけるんですか!」