このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 扉を叩いて入室すると「まんま~、ぱっぱ~」とマリアンヌはおすわりしながら両手を振り回している。
 その姿があまりにも愛らしくて、クライブと顔を見合わせた。
「閣下。今、マリアンヌがママって呼びましたよね?」
「ああ、パパとも呼んだな」
 これではエーヴァルトと同じではないかと思いつつも、やはり親として認められたような気がして嬉しさを隠しきれない。
「マリー。ぼくはアルベルト。アルってよんで」
 アルベルトが対抗心を剥き出しにしてきた。こういうところは、父親のエーヴァルトにそっくりである。
「あ~あ~」
「いま、アルってよんだよね?」
 聞く者によってはそう聞こえたかもしれない。
「そうですね、アルベルト様」
 イリヤは微笑みながら答えた。
「マリーは、お利口ね。みんなのことが、わかるようになったのね」
 マリアンヌの顔をのぞきこむと、抱っこしてといわんばかりに両手を広げている。イリヤがマリアンヌを抱き上げると、アルベルトはつまらなさそうに見上げてきた。
「アルベルト様も抱っこしてほしいのですか?」
 イリヤが尋ねると、アルベルトは恥ずかしそうにもじもじとする。
「では、私が抱っこしてもよろしいですか?」
 そう言ってかがんだのはクライブである。すると、アルベルトは余計にもじもじし始めた。
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