このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 クライブの声に、コホンとサマンサが咳払いをする。その視線はじとぉっとどこか蔑むような視線にも見えた。
「旦那様」
 さらに咎めるような鋭い声。
「あ、あぁ……イリヤ……その、あれだ。よく似合っている……」
 たったそれだけの言葉であるのに、なぜかクライブは頬をほんのりと赤くしていた。そうなればイリヤだって恥ずかしくなる。
「あ、ありがとうございます……」
 その様子をサマンサがニコニコと見ているし、ナナカの腕の中のマリアンヌもあ~あ~と嬉しそうに声をあげていた。
「では、イリヤ。マリアンヌ。行こう」
 これからイリヤは正式な聖女として、国民にお披露目される。
 それはマリアンヌを守るためだと自身に言い聞かせて、イリヤはナナカから愛らしく声をあげている彼女を受け取った。
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