このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「おはよう、マリー」
 マリアンヌはきょろきょろと周囲を見回している。
「どうした? マリー」
 クライブもマリアンヌの顔をのぞき込む。
「ぱ~ぱ~」
 腕を伸ばしたマリアンヌが狙っているのは、クライブの眼鏡である。
「マリー、めっよ、めっ!」
 マリアンヌはすぐにクライブの眼鏡を狙うのだ。
 クライブはすかさず眼鏡を外して、マリアンヌにかけた。
「あ~あ~?」
 マリアンヌも眼鏡をクライブからもらえるとは思っていなかったようで、ぶんぶんと首を振っている。
 その様子を見て、笑いをかみ殺しているのはエーヴァルトである。
 マリアンヌの行動一つで、緊張に包まれていたこの場がやわらいだ。
 クライブはひょいと眼鏡を取り返した。
「あ~う~」
 するとマリアンヌは、またクライブの眼鏡に手を伸ばす。
「マリーはクライブの眼鏡が気に入っているのだな」
 やっとエーヴァルトが口を開いた。
「クライブ。もう、眼鏡を外したほうがいいのではないか? 邪魔だろう?」
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