このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
 召喚の儀のときにイリヤもちらっと目にしたが、顔を見ただけでも一癖も二癖もありそうな人たちであった。
 王城に入ると、すぐさま控え室に案内される。そこには幾人もの侍女たちが待ち構えていた。
「あ~だ~だ~」
 マリアンヌが手足をばたつかせながら、おろせと騒いだ。
 クライブも困ったように顔をしかめたものの、マリアンヌに弱い彼は、すぐさまその主張を受け入れる。
 ソファの上におろされたマリアンヌは一人でおすわりをした。
「聖女様、お召し替えを。閣下とお嬢様は、こちらでお待ちください」
「クライブ様。マリーをお願いしますね」
 イリヤはこれからパーティー用のドレスに着替えるのだ。その話を聞いたときは、うへぇと思ったものの、これも周囲に聖女の存在を知らしめるためなので、仕方ないとわりきっている。
「まんま~まんま~」
 マリアンヌがソファの上で暴れ始めた。
 これはもしかして、後追いというようなそんな感じなのではないだろうか。
 クライブがすかさず眼鏡を取り出す。眼鏡をかけたクライブが、早く行けとでも言うかのように首を振る。
「では、聖女様」
 侍女の言葉に従い、隣の部屋へと移動する。
 先ほどまでの白いドレスを脱がされ、今度はコルセットをつけた。今度は、深い緑色のドレスを身につける。
 マホガニーの髪も結い上げられ、先ほどまでの清楚なイメージががらりとかわった。
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