このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「お前が言うと、変態に聞こえるからやめろ。それに、遊びにきているわけではない」
 クライブの言うとおりである。ここには、魔物討伐へとやってきた。そして、あわよくば瘴気を祓うために。
「だからって、君たちは三人同じ部屋で、わたしだけひとりぼっち……」
「立場を考えろ」
「あだあだ」
 見ている分には面白いのだが、そろそろエーヴァルトの後ろにいる彼らがかわいそうになってきた。
「クライブ様。そろそろその辺で……」
「さすが、イリヤ殿」
 エーヴァルトは、クライブがイリヤとの結婚を公表してから、イリヤの呼び方を変えたのだ。
「そうやって私を慰めてくれるのは、イリヤ殿だけだ」
 しかし、エーヴァルトの肩をもてば、機嫌の悪くなる人物がいるのも忘れてはならない。じろりと睨まれた。
「イリヤは、陛下の肩をもつのか?」
「肩をもつとかもたないとか。そういったものではありません」
 そこで、ちらっとエーヴァルトの後ろに控えている騎士たちに視線を向ける。
「陛下に振り回されて、かわいそうではありませんか?」
 うんうんと頷くのは、騎士たちである。
 クライブは、大きく肩を上下させた。これ以上のやりとりは無駄であるとわかったのだろう。
「彼らに迷惑をかけない範囲であれば、マリアンヌに会いに来てもいいです」
「では、夕食の後にも来ていいのか?」
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