このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「まんま~、ぱっぱ~」
 マリアンヌが高い場所にいる。と思ったら、エーヴァルトの肩に乗っていた。
「マリー」
「まんま~、まんま~」
 そのような場所で暴れたら、落ちてしまうかもしれない。
「こら、マリー。暴れるでない」
「まんま~、まんま~」
「こら、あ、いたい」
 おろせ、おろせ、と言わんばかりに、エーヴァルトの頭をぽかぽかと叩き始めた。痛い痛いと騒いでいるエーヴァルトであるが、その顔は気持ち悪いくらいににやけている。
 それでもマリアンヌが落ちては危ないと思っているのか、彼女の身体をつかみ、肩からおろす。
 マリアンヌは地面に足がつくと、エーヴァルトの足を支えにして立っているのだが、まんま、まんまとイリヤを呼んでいた。
 イリヤが慌ててマリアンヌに向かって小走りで近づき、マリアンヌもエーヴァルトの足から手をはなし、イリヤに向かって一歩踏み出す。
「クライブ様!」
 その出来事に、イリヤは大きな声でクライブを呼ぶ。
 すぐにマリアンヌはバランスを崩して尻餅をつきそうになったところを、エーヴァルトが支えた。
「見ました? 今! マリーが歩きました」
「……見た」
「てことは、今日がマリーの誕生日ってことで、いいですよね?」
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