このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「そうだな……」
 エーヴァルトに捕まったマリアンヌは、またぽかぽかと彼の足を叩いている。もちろん、エーヴァルトはそのようなことを気にせず、マリアンヌに言葉をかけた。あのデレデレした顔を見ればわかるが、マリアンヌであれば叩かれようが殴られようが、気にならないのだ。
 イリヤがマリアンヌに近づき、抱き上げた。
「まんま~」
「やはり、イリヤ殿には敵わないな」
「エーヴァルト様、見ました? マリーが歩いたんですよ」
 たかいたかいとマリアンヌの身体を持ち上げると、きゃ、きゃと楽しげな声をあげる。
「見た。今日は、なんて素晴らしい日なんだ。マリーのはじめの一歩が見られただなんて」
「それで、クライブ様と決めたのですが。マリーが歩いた日を一歳の誕生日にしようって」
「つまり、今日がマリーの誕生日……なんてことだ……プレゼントを準備していない。いや、パーティーを開かなければ」
「イリヤ……こいつには内緒にしておけ、と……」
「あっ……」
 マリアンヌが歩いたことが嬉しくて、おもわず誕生日の件もぽろっと口にしてしまった。
「エーヴァルト様……今のことは聞かなかったことに……」
「できるわけがないだろう? 今日は素晴らしい日だ。マリーが初めて歩き、それがマリーの誕生日だなんて」
 ひとり感極まっているエーヴァルトであるが、それはアレンの声にかき消された。
「聖女様。ご無事ですか? 怪我はされておりませんか?」
「はい。クライブ様が守ってくださったので……」
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