このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「だぁあ?」
 まるで二人の会話を理解しているかのように、マリアンヌが声をあげた。
「今、できることは、魔物を討伐すること。そして瘴気を祓うことくらいだ……」
「……どうやら、瘴気がなくなっているようだな」
 エーヴァルトの声でクライブの話は中断された。
「イリヤ嬢。よくやった。君のおかげで瘴気は祓われた」
 エーヴァルトはイリヤの両手をとって、ぶんぶんと振り回す。
「え?」
 もちろんイリヤには瘴気を祓う力などない。それは聖女にのみが使える力だから。
「あ~あ~」
 マリアンヌもクライブに抱っこされながら、腕をぶんぶんと振り回していた。
「マリー?」
 イリヤがマリアンヌを見つめると、彼女は上機嫌で声をあげている。
「クライブ様?」
 彼は黙って深く頷いた。
 クライブもイリヤの言いたいことを理解したようだ。
 瘴気を祓ったのはマリアンヌしかいない。エーヴァルトと共に魔物を倒していたあのときに、一緒に瘴気まで祓っていたのだろう。
 しかしここにいる者たちは、イリヤが聖女だと思っている。
「だが、正式には魔法使いを派遣して確認してもらおう。時空の歪みについても、彼らにみてもらう。イリヤ殿、時空の歪みは確認できるか?」
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