このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
エピローグ
 イリヤは天蓋付きの寝台の上で、目の前の黒髪の男を見上げた。
「それで、クライブ様……いったい、ナニを……?」
「ナニをって。これから夫婦の営みをするのだろう?」
 それはイリヤにとって初耳である。
「安心しろ。オレは、お前で勃つ」
「安心できません。別に、私で勃たたせなくてもよろしいのですよ?」
「それは、もう無理だ」
 クライブが深く口づけた。それはもうとろけるような甘い口づけで、イリヤの頭はぼんやりとするくらい、心地よいものであった。
「オレの妻はかわいいな……」
 妻だけど本当の妻ではありません、とはもう言えない。
 二人は今日、大勢の人たちに見守られながら、永遠の愛を誓った。
 宰相クライブと聖女イリヤの結婚式。
 結婚の誓約だけは交わしていたが、瘴気の件が落ち着くまでは式を挙げないと二人で決めた――
 そういう話になっていたのだ。エーヴァルトの作り話でもあるが、彼の作り話は真実になるから権力とは恐ろしいものである。
 そしてその瘴気も祓われ、魔物の件も落ち着いたところで式を挙げた。ということになっている。これも権力のなせる業。
 その結婚式には、マーベル子爵とサブル侯爵も参列し、祝福してくれた。だが、その二人が心なしか痩せたように見えたのは気のせいだったろうか。
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