このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
『まぁ。魔物に襲われた集落の後片付けみたいなものだからな。大変なのではないか?』
 そうクライブは言っていたが、そんな内容を知っている時点で、彼らがミルトの森近くに行っているのはクライブのせいではないかと疑ってしまう。ここにも見えない権力が働いたのではないだろうか――
 そんな彼が、イリヤに熱い眼差しを向ける。
「イリヤ……オレを知って、オレを好きになったか?」
「え?」
「イリヤが言っただろう? 時間をかけて相手を知り、そこから愛情が生まれていくと。オレたちはもう、半年以上も一緒に暮らしている。時間はかけたつもりだ。オレに対する愛情は生まれたか?」
 吸い込まれそうなアイビーグリーンの瞳に見つめられると、胸がトクンと高鳴る。
「そ……そうですね……」
 いつからだろう。
 クライブとマリアンヌとの三人での暮らしを、これからも望むようになったのは。
 そこに新しい家族が増えるのも楽しいかもしれないと、妄想を抱くようになったのは。
「イリヤ……」
 彼が耳元で愛をささやいた。
 嬉しいけれど、恥ずかしい。胸がぎゅっと締め付けられて、目頭が熱くなった。
 クライブの手がイリヤのドレスを脱がそうとしたとき。
 ――ドン!
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