このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
エーヴァルトが感極まり、今にも泣きそうである。いったい、マリアンヌは今までどれだけのことをしてきたのか。
「やはり、イリヤ嬢が毒婦とか悪女というのは嘘であったのだな」
「どういうことです?」
イリヤは首を傾げた。エーヴァルトのその言葉が気になる。
一つに結わえていたマホガニーの髪がはらりと前にたれ、マリアンヌがその先を手にした。新しいおもちゃがやってきたと喜んでいるかのよう。
「その理由は、今は言えない。アルベルトもいるしな。あとでクライブから聞いてくれ」
「わかりました」
そこからはクライブの屋敷へと移動する準備となった。
とにかく、慌ただしい一日である。
イリヤは一度、宿に戻ってそこを引き払う。宿の主人もイリヤの境遇を知っており、噂が事実と異なることも薄々と気づいていたようで、仕事が見つかったと言うと、目尻にうっすらと涙を浮かべながら喜んでくれた。
それからクライブと一緒に馬車に揺られながら、クライブ所有の屋敷へと向かう。イリヤの腕の中ではマリアンヌが機嫌よさそうに一人であ~う~あ~う~と声をあげていた。
「ところで、先ほど陛下が言っていた、私の噂が嘘っていうのはどういうことですか?」
今までイリヤがいくら否定しても、初対面の人間は噂を信じてその言葉を受け入れてはくれなかった。その悔しさを知っているだけに、先ほどエーヴァルトの態度は気になった。
「ああ。それはマリアンヌがおとなしく抱かれているからだな。マリアンヌは人に敏感な子だ。遊び歩いているような男女に抱っこされると、大泣きする。それ以外にもなかなか気難しく、陛下でさえも手を焼いていた」
「それってもしかして……陛下が遊び人だった、とか?」
「やはり、イリヤ嬢が毒婦とか悪女というのは嘘であったのだな」
「どういうことです?」
イリヤは首を傾げた。エーヴァルトのその言葉が気になる。
一つに結わえていたマホガニーの髪がはらりと前にたれ、マリアンヌがその先を手にした。新しいおもちゃがやってきたと喜んでいるかのよう。
「その理由は、今は言えない。アルベルトもいるしな。あとでクライブから聞いてくれ」
「わかりました」
そこからはクライブの屋敷へと移動する準備となった。
とにかく、慌ただしい一日である。
イリヤは一度、宿に戻ってそこを引き払う。宿の主人もイリヤの境遇を知っており、噂が事実と異なることも薄々と気づいていたようで、仕事が見つかったと言うと、目尻にうっすらと涙を浮かべながら喜んでくれた。
それからクライブと一緒に馬車に揺られながら、クライブ所有の屋敷へと向かう。イリヤの腕の中ではマリアンヌが機嫌よさそうに一人であ~う~あ~う~と声をあげていた。
「ところで、先ほど陛下が言っていた、私の噂が嘘っていうのはどういうことですか?」
今までイリヤがいくら否定しても、初対面の人間は噂を信じてその言葉を受け入れてはくれなかった。その悔しさを知っているだけに、先ほどエーヴァルトの態度は気になった。
「ああ。それはマリアンヌがおとなしく抱かれているからだな。マリアンヌは人に敏感な子だ。遊び歩いているような男女に抱っこされると、大泣きする。それ以外にもなかなか気難しく、陛下でさえも手を焼いていた」
「それってもしかして……陛下が遊び人だった、とか?」