このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「その可能性は否定できないが……って、お前、何を言わせる。ああ見えても陛下は、トリシャ様一筋だ」
ああ見えてもという言い方に少し引っかかりを覚えたが、クライブがエーヴァルトを信頼し、エーヴァルトがトリシャを思っている様子は伝わってきた。
「私としましては、マリアンヌはかわいいし、あの人たちから解放されて、やっと一息つけた感じがします」
「それはよかった。だが、オレたちの結婚の真の意味を他の者に悟られてはならない。それは、わかっているな?」
「え? それはどういう意味です?」
「陛下が、マリアンヌとアルベルト王子を結婚させたいがために、臣下を無理矢理結婚させて、マリアンヌの面倒をみさせているとか、そんな噂が広がってみろ」
噂ではなく事実である。
「とにかく、聖女マリアンヌはマラカイト王国にとってなくてはならない存在だが、まだ赤ん坊であるため、その事実は隠されているからな」
「それは先ほども聞きました。どうせなら陛下の隠し子ってことにしておけばよかったのに……」
ぶほっとクライブは噴き出した。
「お前は……ときどき突拍子もないことを口にするな」
はて? とイリヤは首をひねった。
「とにかく、オレとお前は結婚した。その現実を受け入れろ。わかったな」
「え、と……雇用契約では?」
「ここまできて、まだそんなことを言うのか? さっきの書類のどこが雇用契約書だ。あれは婚姻届だ」
「そう、ですね……? いやいやいや、最初に閣下は私の雇用主になるとおっしゃったじゃないですか。婚姻届は出したかもしれませんが、やはり私と閣下の関係は雇用関係です」
ああ見えてもという言い方に少し引っかかりを覚えたが、クライブがエーヴァルトを信頼し、エーヴァルトがトリシャを思っている様子は伝わってきた。
「私としましては、マリアンヌはかわいいし、あの人たちから解放されて、やっと一息つけた感じがします」
「それはよかった。だが、オレたちの結婚の真の意味を他の者に悟られてはならない。それは、わかっているな?」
「え? それはどういう意味です?」
「陛下が、マリアンヌとアルベルト王子を結婚させたいがために、臣下を無理矢理結婚させて、マリアンヌの面倒をみさせているとか、そんな噂が広がってみろ」
噂ではなく事実である。
「とにかく、聖女マリアンヌはマラカイト王国にとってなくてはならない存在だが、まだ赤ん坊であるため、その事実は隠されているからな」
「それは先ほども聞きました。どうせなら陛下の隠し子ってことにしておけばよかったのに……」
ぶほっとクライブは噴き出した。
「お前は……ときどき突拍子もないことを口にするな」
はて? とイリヤは首をひねった。
「とにかく、オレとお前は結婚した。その現実を受け入れろ。わかったな」
「え、と……雇用契約では?」
「ここまできて、まだそんなことを言うのか? さっきの書類のどこが雇用契約書だ。あれは婚姻届だ」
「そう、ですね……? いやいやいや、最初に閣下は私の雇用主になるとおっしゃったじゃないですか。婚姻届は出したかもしれませんが、やはり私と閣下の関係は雇用関係です」