このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「着替えたいのだが、部屋に連れて行ってもいいか?」
クライブのその問いは、誰に許可を求め、誰を連れていくのかがわからない。
ここにいるのは四人。そして、彼が抱いているのはマリアンヌ。となれば、マリアンヌを部屋に連れていくのをイリヤかチャールズに許可を求めていると考えるのが妥当だろう。しかしチャールズが使用人であるのを考えると、やはりイリヤに尋ねたと考えるのが無難だ。
「はい」
クライブは、マリアンヌが眼鏡に手を出さないように彼女を縦抱きにした。肩に顔を預けているから、彼の後ろを歩くイリヤからは楽しそうなマリアンヌの表情がよく見える。
「あ~あ~」
マリアンヌはイリヤに向かって手を伸ばす。イリヤも彼女の手に自分の手を伸ばすと、がしっとマリアンヌがイリヤの指をつかんだ。
「きゃ、きゃっ」
何が楽しいのか、声を出して手足をばたつかせる。
ドンッ――
「あっ……急に立ち止まらないでください」
よくわからないがクライブがその場で立ち止まったため、イリヤは彼の背に顔面をぶつけてしまった。ふわっと汗と香水の混じった匂いが鼻をかすめる。
「マリアンヌが身を乗り出したからな。危ないと思って止まっただけだ。もしかして、どこか痛めたか?」
顔だけ後ろを向けて、彼はイリヤを見下ろす。
クライブのその問いは、誰に許可を求め、誰を連れていくのかがわからない。
ここにいるのは四人。そして、彼が抱いているのはマリアンヌ。となれば、マリアンヌを部屋に連れていくのをイリヤかチャールズに許可を求めていると考えるのが妥当だろう。しかしチャールズが使用人であるのを考えると、やはりイリヤに尋ねたと考えるのが無難だ。
「はい」
クライブは、マリアンヌが眼鏡に手を出さないように彼女を縦抱きにした。肩に顔を預けているから、彼の後ろを歩くイリヤからは楽しそうなマリアンヌの表情がよく見える。
「あ~あ~」
マリアンヌはイリヤに向かって手を伸ばす。イリヤも彼女の手に自分の手を伸ばすと、がしっとマリアンヌがイリヤの指をつかんだ。
「きゃ、きゃっ」
何が楽しいのか、声を出して手足をばたつかせる。
ドンッ――
「あっ……急に立ち止まらないでください」
よくわからないがクライブがその場で立ち止まったため、イリヤは彼の背に顔面をぶつけてしまった。ふわっと汗と香水の混じった匂いが鼻をかすめる。
「マリアンヌが身を乗り出したからな。危ないと思って止まっただけだ。もしかして、どこか痛めたか?」
顔だけ後ろを向けて、彼はイリヤを見下ろす。