このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
「大丈夫です。おでこがぶつかっただけなので」
「ふむ。大丈夫そうだな、赤くはなっていない」
クライブは空いている手でイリヤの前髪を上げ、額を確認した。イリヤだってそれほど衝撃があったわけではない。だけど、彼に文句の一つや二つを言いたくて、「急に止まるな」と言っただけなのだ。
それなのにイリヤの様子を心配して顔をのぞき込まれたら、違う意味で赤くなってしまう。
「大丈夫ですから。ほら、さっさと着替えましょう」
イリヤはクライブの背を押して、先を急がせた。その間も、マリアンヌは「きゃ、きゃ」と声をあげているし、数歩後れてついてくるチャールズは笑みをたたえている。
クライブは部屋に入るとマリアンヌをイリヤに渡した。彼はこれから着替えるのだが、イリヤはどうしたらいいのだろう。
「そこに座っていろ、すぐに着替える」
「はぁ……」
別にイリヤがここにいなくてもいいのではないだろうか。クライブに促されたふかふかのソファに身体を預け、マリアンヌを抱き上げて「たかいたかい」をしてみる。
首はしっかりと据わっているものの、まだ一人でのおすわりは不安定なところがある。腰がしっかりと据わるまで、もう少しといったところだろう。となれば、月齢は半年から九か月程度か。成長から月齢を推測するのは、個人差もあるため難しい。
それでも妹たちのあのときの姿と重なる。彼女たちは、母親はどうしているだろう。
音もなくソファが沈んだ。
「あ~、だ~」
「なんだって機嫌がいいな。この姿のマリアンヌをあいつに自慢してやりたい」
「ふむ。大丈夫そうだな、赤くはなっていない」
クライブは空いている手でイリヤの前髪を上げ、額を確認した。イリヤだってそれほど衝撃があったわけではない。だけど、彼に文句の一つや二つを言いたくて、「急に止まるな」と言っただけなのだ。
それなのにイリヤの様子を心配して顔をのぞき込まれたら、違う意味で赤くなってしまう。
「大丈夫ですから。ほら、さっさと着替えましょう」
イリヤはクライブの背を押して、先を急がせた。その間も、マリアンヌは「きゃ、きゃ」と声をあげているし、数歩後れてついてくるチャールズは笑みをたたえている。
クライブは部屋に入るとマリアンヌをイリヤに渡した。彼はこれから着替えるのだが、イリヤはどうしたらいいのだろう。
「そこに座っていろ、すぐに着替える」
「はぁ……」
別にイリヤがここにいなくてもいいのではないだろうか。クライブに促されたふかふかのソファに身体を預け、マリアンヌを抱き上げて「たかいたかい」をしてみる。
首はしっかりと据わっているものの、まだ一人でのおすわりは不安定なところがある。腰がしっかりと据わるまで、もう少しといったところだろう。となれば、月齢は半年から九か月程度か。成長から月齢を推測するのは、個人差もあるため難しい。
それでも妹たちのあのときの姿と重なる。彼女たちは、母親はどうしているだろう。
音もなくソファが沈んだ。
「あ~、だ~」
「なんだって機嫌がいいな。この姿のマリアンヌをあいつに自慢してやりたい」