このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
*~*~*
そろそろ朝方は冷えるような季節になってきた。その時期に安っぽい宿からファクト公爵邸に移ってこられたのは僥倖である。
ぬくぬくとあたたかい寝台で眠れるのは、至福のひととき。今もあたたかい人肌に包まれて――
「……んっ?」
あたたかかった。本当にあたたかくて、寝台から出たくないほど。そのぬくもりに触れると、何やら硬いような、柔らかいような。
「ひっ……ん、ぐぅ」
目を開けた瞬間、飛び込んできたのはクライブの端整な顔立ちである。そして彼は、イリヤが目を開けた瞬間、口をふさいだ。
「ん、んんんん、んんー!!」
「落ち着け、叫ぶな。魔法も使うな」
口をしっかりと塞がれているため、返事ができない。その代わりにコクコクと頷いた。
「よし、この手をどかす。だけど、叫ぶな」
「はぁ」
大きく息を吸い込み、ぱちぱちと瞬きをする。まだ、寝ぼけているのかもしれない。
「……あの。これは夢でしょうか?」
「オレのなかでは現実だな」
「私……もしかして、閣下にしがみついて寝てました?」
むしろ今、クライブの腕の中にいる。そして彼は、なぜか裸なのだ。
イリヤは慌てて自分の身体を確認するが、その身体はしっかりとナイトドレスをまとっている。
「いったい、ナニが?」
「オレはシャツを着ていると眠れないから、イリヤが眠ったあとに服を脱いで寝た」
そろそろ朝方は冷えるような季節になってきた。その時期に安っぽい宿からファクト公爵邸に移ってこられたのは僥倖である。
ぬくぬくとあたたかい寝台で眠れるのは、至福のひととき。今もあたたかい人肌に包まれて――
「……んっ?」
あたたかかった。本当にあたたかくて、寝台から出たくないほど。そのぬくもりに触れると、何やら硬いような、柔らかいような。
「ひっ……ん、ぐぅ」
目を開けた瞬間、飛び込んできたのはクライブの端整な顔立ちである。そして彼は、イリヤが目を開けた瞬間、口をふさいだ。
「ん、んんんん、んんー!!」
「落ち着け、叫ぶな。魔法も使うな」
口をしっかりと塞がれているため、返事ができない。その代わりにコクコクと頷いた。
「よし、この手をどかす。だけど、叫ぶな」
「はぁ」
大きく息を吸い込み、ぱちぱちと瞬きをする。まだ、寝ぼけているのかもしれない。
「……あの。これは夢でしょうか?」
「オレのなかでは現実だな」
「私……もしかして、閣下にしがみついて寝てました?」
むしろ今、クライブの腕の中にいる。そして彼は、なぜか裸なのだ。
イリヤは慌てて自分の身体を確認するが、その身体はしっかりとナイトドレスをまとっている。
「いったい、ナニが?」
「オレはシャツを着ていると眠れないから、イリヤが眠ったあとに服を脱いで寝た」