このたび聖女様の契約母となりましたが、堅物毒舌宰相閣下の溺愛はお断りいたします! と思っていたはずなのに
そろそろ離乳食を始めたらどうだろうかとナナカに相談してみたところ、彼女もその意見には同意した。となればやはり月齢は七か月くらいなのだろうか。
「奥様……」
声がした先に目を向けると、チャールズとサマンサがあたたかな眼差しでこちらを見つめている。
「勉強の時間です」
さすがに、ぐうたら生活とはいかないようだ。
「わかりました」
クライブから『とにかく、オレに恥をかかせるな』と言われてしまうと、恥をかかせてやってもいいかなとは思うのだが、そうなるとファクト公爵家全体の恥となり、それがマリアンヌにも影響する。となれば、やはりクライブに恥をかかせてはならないのだ。
「お嬢様をお預かりします」
マリアンヌをナナカに預けると、図書室へと向かう。ここがイリヤの勉強部屋である。
イリヤだって子爵令嬢の端くれであった。語学や作法の教養面に関しては特に問題はない。むしろ、それを子どもに教える家庭教師の立場であったのだ。
クライブが不在のときは、女主人として屋敷を切り盛りする必要がある。小さなマーベル子爵邸と、国内の四大公爵とも言われるファクト公爵邸では、まったくもって采配が異なる。
今まではチャールズとサマンサが主体となって行ってきた屋敷のことを、イリヤにも覚えてほしいとクライブがその二人に伝えたようだ。
ふとイリヤは思う。
イリヤはマリアンヌの母親になるということでこの結婚を引き受けた。だが、クライブの妻としての立ち居振る舞いを求められるのは、契約外なのではないか。
と、そんなふうに考えてしまうくらい、数字が絡むものは苦手だった。
「奥様……」
声がした先に目を向けると、チャールズとサマンサがあたたかな眼差しでこちらを見つめている。
「勉強の時間です」
さすがに、ぐうたら生活とはいかないようだ。
「わかりました」
クライブから『とにかく、オレに恥をかかせるな』と言われてしまうと、恥をかかせてやってもいいかなとは思うのだが、そうなるとファクト公爵家全体の恥となり、それがマリアンヌにも影響する。となれば、やはりクライブに恥をかかせてはならないのだ。
「お嬢様をお預かりします」
マリアンヌをナナカに預けると、図書室へと向かう。ここがイリヤの勉強部屋である。
イリヤだって子爵令嬢の端くれであった。語学や作法の教養面に関しては特に問題はない。むしろ、それを子どもに教える家庭教師の立場であったのだ。
クライブが不在のときは、女主人として屋敷を切り盛りする必要がある。小さなマーベル子爵邸と、国内の四大公爵とも言われるファクト公爵邸では、まったくもって采配が異なる。
今まではチャールズとサマンサが主体となって行ってきた屋敷のことを、イリヤにも覚えてほしいとクライブがその二人に伝えたようだ。
ふとイリヤは思う。
イリヤはマリアンヌの母親になるということでこの結婚を引き受けた。だが、クライブの妻としての立ち居振る舞いを求められるのは、契約外なのではないか。
と、そんなふうに考えてしまうくらい、数字が絡むものは苦手だった。