身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
突然、ドアの向こうから、如月の寝ぼけ声が聞こえてきた。



とたんに、憎たらしかったノアの顔が、一瞬にしてパッと弾けるような笑顔に変わる。



「んーん、何でもなぁ~いっ」



鼻にかかった甘い声で返事をしながら、彼女は愛する彼氏の元へ戻って行ってしまった。



その際に、バタン! と私の目の前で、ドアが大きな音を立てて閉まる。



考え過ぎかもしれないけど、『もうお前は用なし』とばかりにシャットアウトされた気分。



別に『(ねぎら)え』だとか、『感謝しろ』だなんて1ミリも思ってないし、『私のおかげで助かったでしょ?』なんて、恩着せがましいことをゴチャゴチャ言いたいわけじゃないけどさ。



『あんたは理不尽な目に遭って当然!』って豪語するようなやつなんかのために、私が身代わりを引き受ける必要ってある?



……ないよね?


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