身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「あれ? 一葉さんは?」



「今回も用事があるからパスするってさ」



「えっ? また?」



棗の答えに、私は思わず聞き返してしまった。



梅雨が明けた、6月が終わりかけの土曜日。



この日。私は、理音さんと棗と大河の3人と一緒に、最近海の近くにオープンした華集院グループ運営のリゾートレストランに来ていた。



青い空に青い海。



眺めのいいオープンテラスのテーブル席で、トロピカルスイーツやドリンクを5人で楽しむはずだったのに……。



ここのところ、一葉さんは『用事』とやらで休んでばかりだから、最近は彼を抜いた4人で集まるのが当たり前になっている。



「で、一葉さんの用事って一体何なの?」



「お見合いだよ」

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