身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「おみあい……?」



日常で聞くことがないその言葉に、ほんの一瞬視界が真っ白になった。



同時に、心臓に鋭いものが突き刺さるような痛みが走る。



「週末になる度に、婚約者候補と顔合わせしなきゃいけないんだってさ。ああ見えてあいつ、将来的に家を継ぐことになる御曹司だからな」



「家を継ぐって……一葉さんって、そんなに由緒正しきところのお坊ちゃんなの?」



戸惑う私に棗は、「そりゃそうだよ」と当然のことのように言葉を返す。



「だってあいつ、黒曜高校の理事長の息子だもん」



「理事長の息子? 何それ、聞いてない……」



「あれ? 日和ちゃん、知らなかったの?」



「てっきり本人から聞いてると思ってたんすけど」



衝撃的な新事実に、私どころか理音さんと大河も面食らう。



「いや、まったく……。今のが初耳なんだけど……」



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