身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
ずっと前から、一葉さんはどこぞのお金持ちのお坊ちゃんだろうとは予想していた。
一人称が「僕」で物腰が柔らかいところや、黒塗りの高級車で移動するところで、『もしかして』とピンとくる場面は少なくなかったように思う。
でも、いくらそれなりに親しいとは言え、彼のことをいろいろ詮索するのは下世話で失礼だろうと、あえて聞かなかったんだ。
だからこそ、この場で一葉さんが本物のお坊ちゃんだと知った今。
いくら一葉さんと親交があって、同じ街で暮らしているとはとは言え、私と彼は遠く離れた別世界の人間だとまざまざと思い知らされる。
「じゃあ、理音さんもお見合いしたり、婚約者が決まってたりするんですか?」
「まったくないね。僕の両親は恋愛結婚だから、自由にさせてくれているのもあるんだろうけど。棗は?」
「俺のところもないですね。うちもそれなりの名家だけど、両親とも超がつくほど放任主義だし」
「ふーん。そっか……」
お金持ちの家に生まれたからって、必ずしも親に結婚相手を決められたり、お見合いをしなきゃいけないわけじゃないんだな。
でも、一葉さんは違うんだ。
私の知らない、どこかのいいとこのお嬢様と結婚するんだな……。
一人称が「僕」で物腰が柔らかいところや、黒塗りの高級車で移動するところで、『もしかして』とピンとくる場面は少なくなかったように思う。
でも、いくらそれなりに親しいとは言え、彼のことをいろいろ詮索するのは下世話で失礼だろうと、あえて聞かなかったんだ。
だからこそ、この場で一葉さんが本物のお坊ちゃんだと知った今。
いくら一葉さんと親交があって、同じ街で暮らしているとはとは言え、私と彼は遠く離れた別世界の人間だとまざまざと思い知らされる。
「じゃあ、理音さんもお見合いしたり、婚約者が決まってたりするんですか?」
「まったくないね。僕の両親は恋愛結婚だから、自由にさせてくれているのもあるんだろうけど。棗は?」
「俺のところもないですね。うちもそれなりの名家だけど、両親とも超がつくほど放任主義だし」
「ふーん。そっか……」
お金持ちの家に生まれたからって、必ずしも親に結婚相手を決められたり、お見合いをしなきゃいけないわけじゃないんだな。
でも、一葉さんは違うんだ。
私の知らない、どこかのいいとこのお嬢様と結婚するんだな……。