身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
気付けば私は、きびすを返して全力疾走していた。



ただひたすら街中を走って、走って、走り続けて。



限界が近付いたタイミングで、今の自分の姿を誰にも見られないように、人気のないビルとビルの間に入り込んだ。



「はっ……、はぁっ……!」



がくがく震えるひざに手をついて、荒い息を整えようと何度も深呼吸するけどうまくいかない。



それどころか、ノアと一葉さんのキスシーンが、嫌がらせのように脳裏に繰り返し再生されて、息をするだけでも苦しかった。



もう立っているのも辛くて、その場にしゃがみ込む。



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