身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「は……?」



「本当よ。あたしが高校を卒業する再来年の春に、一葉と入籍することになってるの。もちろん結婚式も挙げる予定なの」



聞いてもないのに、ノアは一葉さんとのお見合いや婚約のことをウキウキした声でペラペラ語り始める。



「正直、最初はすごく嫌だったんだけどね。パパの会社のために、好きでもない相手と結婚しなきゃいけないとか最悪じゃん?」



「…………」


「でも、実際に一葉に会ったら、そんな気持ちはすぐに吹き飛んだの! 大人っぽくてかっこいいのに、物腰が柔らかくて、こんなに大きな退屈しない街に住んでるんだもん。もう絶対に結婚したい! って思ったんだけど、あたしたち以上にパパと一葉のパパが意気投合しちゃって。それですぐに婚約成立したってわけ」



「……如月はどうしたの? 別れたの?」



「ううん、まだ。でも、如月はすごくちやほやしてくれるから、一緒にいて気分が良くなるのよね。しばらくは相手をしてもらうためにキープして、タイミングを見て、完全に一葉オンリーにする予定かな」



こいつ……、自分さえ良ければ二股だってかけるんだ。



別に如月の味方をするわけじゃないけどさ。



あんなにまっすぐにノアを溺愛している彼の気持ちを踏みにじって、一葉さんの代わりにキープ?



ふざけてる。



人の気持ちを踏みにじるのも、大概にして欲しい。


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