身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「飛ばせ」



偉そうに命令を下す声が聞こえた直後。



バタン、とドアが閉められる音がした。



エンジンが騒々しい唸り声を上げて、車が勢いよく発進する気配がする。



ああ。私はこれから、如月が待つplatinumの屋敷に連れ戻されてしまうのか……。



こんな結末は望んでいなかったし、むしろ回避したいところだけど、あいつと出会った時点でこうなることはもう決まっていたのかもしれない。



薄れゆく意識の中で、ふと昔の記憶がよみがえる。



それは去年の4月――、如月と出会ったばかりの春のことだった。


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