身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
どいつもこいつもバカばっか。



あんたたちが探してる桐生ひより――つまり私はすぐ近くにいるっていうのに、誰も気付かないなんて。



灯台下暗しとは言うけれど、鈍感にもほどがあるでしょ……。



寒い1月の夜空の下。



道路の端でバイクにまたがったまま集まる暴走族の様子を、近くの建物の陰からこっそりとうかがっていた私は、呆れて「はあっ」と短いため息をついた。



話を盗み聞きする限り、どうやらこの暴走族は、『銀楽街の天下を取る』って野望のために、この街のトップの暴走族・platinumの総長の彼女である私を人質にしようと画策しているらしい。



これを材料にplatinumに喧嘩をふっかけた後、彼らが私を助けに来たところで一網打尽にして、銀楽街のトップの座もゲット!



――なんて、自分たちに都合のいい妄想まで考えているみたいだけど、甘い。



甘過ぎる。



総長の彼女とはいえ、私はダミー。



しょせん身代わりでしかない私をつかまえたところで、platinumは動かない。



むしろ、『本物の彼女に被害が及ばなくてよかった』で終わるに決まってるんだから。


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