身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「ああ、そうだ」



急に一葉さんが大事なことでも思い出したかのように、ぴたっと立ち止まった。



そこには、床の上に両ひざをついて佇んでいる如月がいた。



一葉さんに痛いところを突かれた上に、私たちの前で醜態をさらして、よっぽどショックだったのだろう。



儚げな容姿をしているだけあって、今にも全身が真っ白な灰になって、風に吹かれてサラサラと消えてしまいそうだ。



「何だよ……」



意気消沈していた如月が、一葉さんの顔を見上げる。



「どうせ、『金輪際日和に関わらないで』って釘を刺すつもりだろ?」



「そうだね……。platinumのメンバーも同様に、また今回のような騒動を起こしたら、次こそ地獄の底まで追い詰めるつもりだ」



「……やっぱり」



「でも、僕が伝えたかったのは、きみの本命彼女の柏木ノアのことなんだけど」



一葉さんがその名前を口にした瞬間、生気を失っていた如月の目の色が変わった。



「ノアだって? お前、まさかノアに何かしたのか⁉」



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