身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「その話、全部嘘だよ。僕もだけど、父さんも何か思うことがあったのか、断りを入れてたしね」



「じゃ……じゃあ、一葉さんは何でノアの車に送られてたんですか? あと、マンションの前でキスしてましたよね⁉」



「送迎は、柏木ノアが『断る条件として送らせろ』と言ったから。それで手打ちになるならと思って応じただけだよ。あと、あれはキスじゃなくて、彼女が僕に一方的に抱き着いてきただけだから」



「つまり、私がいる方向からは、角度的にキスしているように見えていた。ってことですか? ということは……」



「安心して。柏木ノアとは何もないよ」



なんだ……。



自分の中でくすぶっていた、誤解やわだかまりがすうっと消えていく。



ほっとため息をついたとたん。




へなへなと全身の力が抜けていって、「よかった……」と言葉が口からポロッとこぼれ落ちた。



「僕の方こそ、よかった」



「え?」


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