身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
ノアを断ったとしても、一葉さんは今後もさまざまなお嬢様とのお見合いするだろう。



そして、いつか素敵な人と出会って、結婚して、素敵な家庭を築いていくのだろう。



頭の中で彼の幸せな未来を思い描いた直後、胸の奥にチクッと切ない痛みが走ったその時。



「僕がこうしてきみを抱きしめるために、どれだけ努力したかわかってる?」


少しくぐもって聞こえた一葉さんの声に、思わずハッと目を見開く。



「今日までの2週間。僕は父さんを説得して、今後のお見合いをすべてキャンセルしてもらったんだ。その理由が何か、わかる?」



ふるふると首を横に振ると、一葉さんは首筋に埋めていた顔を上げて、私と真っ正面から向き直った。



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