身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
「その話、詳しく教えて欲しいんだけど!」



「うわっ、誰⁉ ……って、日和⁉」



個室のドアを開けて質問した私に、手洗い場にたむろしていた女子たちは一斉に目を丸くした。



無理もない。いきなり他の人の顔が鏡に映り込んだら、誰でもぎょっとするに決まってる。



「あー、びっくりした……。日和か……」



「突然いなくなったと思ったら、こんな所にいたんだね……」



「も~っ! 急におどろかさないでよ‼」



「ごめん。一葉さんとか闇夜の帝王とか、聞こえてきたから気になって、つい……」



「そういえば日和って、まだ闇夜の帝王のこと知らなかったっけ?」



目を丸くする紗奈に、私は首を横に振る。



「うん。『闇夜の帝王』っていう通り名だけは聞いたことあるって感じ」



「通り名って。 くくっ……、昔のヤンキー漫画みたい!」



紗奈につられて他の女子たちもひとしきり笑うと、何も知らない私に闇夜の帝王のことを詳しく説明してくれた。



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