身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
……なんて心の中で毒づいてたら、「もう一度探すぞ!」という野太い大声の後。



一斉にバイクのエンジンをふかす音が、私の耳をつんざいた。



――ウォンウォンウォン



――ドドドドド……



「あー、うるさ……。最悪なんだけど……」



私だけじゃなくて、このあたりに住んでる人たちにも迷惑だから、早いとこどっかに行って欲しい。



両手で両耳をふさぎながら、騒音をまき散らすダサい改造バイクの群れを睨み付ける。



すると、どうやら私の念が届いたらしく。



暴走族はたちどころに、私がいる場所とは真逆の方向へと走り出して行った。



あいつら……、結局一人も私に気付かなかったな。



まあ、見るからにどこまでも果てしいバカって感じだし、つかまらなかっただけで(おん)の字だと思おう。



暴走族、もといおまぬけ騒音バイク集団の姿が完全に見えなくなったのを確認した私は、大きなため息をついて、建物の陰から外に出た。

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