身代わり少女は、闇夜の帝王の愛に溺れる。
だけど、不良たちはしぶとかった。



「えー? 何で~?」


「いーじゃん。どーせヒマでしょ?」



そのうちの一人が、唇をとがらせながら、私の腕をつかもうと手を伸ばしてきた。



私は咄嗟(とっさ)の判断で、近付いてくる男の手の甲をピシャリと叩き、ギロリと睨み付けて威嚇する。



「消えて。二度と私の前に姿を現さないで」



「は……? えっ……?」



きっと、私に叩かれて、「消えて」なんて言われると思ってなかったんだろうな。



不良たちが動揺して、あたりの空気がざわっとしたその隙を狙って、私はアスファルトを蹴って全速力で走り出した。



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